バザールを歩いていると、多くの金銀や銅細工を目にします。
その範囲は装飾品のみならず、フォークやスプーンなど食器類や、鍋や鏡など生活用品、そしてモスクの柱など建造物に至るまで。
どれも美しい意匠が施されており、思わず触れたり手に入れたくなってしまう魅力あるものばかりです。
近くには、製作をする工房も並んでいます。丹念に1軒1軒をのぞいていくと気になる人をみつけました。
銀細工職人のアジズさん。眼光するどい方が多いバザールのなかで、ひときわ柔和な表情と、いかにも職人の分厚い手のひらと腕はいかにも良い物を作りそう。
作品を拝見すると、その繊細なデザインパターンと技術は素晴らしく、純銀100%を使い全てをアジズさん自らがハンドメイドで加工しているとか。
アジズさんの人柄にも惚れこみ、近くで仕入れたターコイズとの相性にも期待がもてたことから、オリジナルのシルバージュエリーの発注を決めるのに時間はかかりませんでした。
もともと、世界で最古の銀の製造というのは紀元前4000年頃に現在のトルコカッパドキアのある地域で行われていたそうです。
その頃は金よりも銀のほうが珍しく、銅の鉱石に含まれていたことから銅を完全にとりのぞくことは難しく残留した銅はグリーンに腐食し残ってしまったとか。そういえば古い出土品を見ていると銀でも少し緑がかってみえることがあります。
そういうことだったのかと妙に納得がいくとともに、改めてアナトリアの人々が原始的な生活の中から、だんだんと高度な精練技術を発達させていった歴史と智慧に畏敬の念が広がっていくのでした。
再びバザール近くを歩いていると、美しい外回廊のあるモスクを発見します。外の喧騒に疲れていたのと、良き出会いに感謝の祈りもしたかったので、導かれるようにヌルオスマニエ・モスクへと入りました。
ここはオスマンバロック様式の最高傑作とも言われているそうで、入るなり迎えられる天高いドームがおおうモスク内は荘厳な雰囲気で静寂さに満ちています。
異なる曲線を組み合わせたような独特の輪郭を持つ窓、色とりどりのステンドグラスにも目を奪われながらも、前を見据えて祈りの時間を捧げようと思ったときでした。 ちょうど、上部の正面窓から真っすぐに太陽の光が差し込んできたのです。
放射する光、叶っていく願い、希望と勇気。
そのとき受け取ったメッセージは、私たちにとっては「アンサー」でした。
コロナ禍で思うような動きができない毎日。
まだ拭えない不安が残るなかで、思い切って飛ぶことを決めた瞬間。
静から動への転換、新たなる世界。
動かされるのではなく、自らが動かす世界。
内なる光は私を認め、宇宙も私を認めている。
アジズさんの工房の近くにヌルオスマニエ・モスクがあったのも、偶然ではないでしょう。光が見計らったかのおうに、真正面に入ったこともメッセージと考えます。
原動となる光を、アジズさんへ送るデザインコンセプトとしなければ。そんな決意をしたヌルオスマニエ・モスクでの出来事でした。
後日知ったのですが、ヌルオスマニエとは「オスマンの光」という意味があるとか。
ヌルオスマニエバングル、ヌルオスマニエブレスレットという名前は少し読みにくいですが、そんな由来とストーリーがあるというお話でした。 出来上がったシルバージュエリー、ぜひ重ね付けでお楽しみいただきたいです。