石名から探す

は行

Dream in Pirika Land 水のピリカ、玉髄の雪解け

かつて海獣がおよぎ、
アイヌ民族が暮らした地の宝もの
Pirka Chalcedony ピリカ玉髄

Prologue

地上に残された、夢の原石を継ぐ

北海道渡島半島の北部にある、今金町の美利河(ピリカ)という場所をご存じでしょうか。
昔はあたり一帯が原生林であったそうですが、いまは夢のように美しい田園や山々、日本一に何度も選ばれた水質をほこる川が流れる豊かな土地です。

約2万年前には、北海道の先住民であるアイヌ民族が居住していた場所でもあり、さらに120万年以上前には海獣も泳ぐ深い海であった場所。

古い地層からは約8mにおよぶ、ピリカカイギュウの巨大化石の一部や生活用品など、数万点が出土しました。
そのひとつに、今回私たちがご紹介する「玉髄(カルセドニー)」もありました。

古代の人々はこの石を矢じりなどに加工し、また明治時代には、その花のような美しさから一時期は海外への輸出もされていたそうです。

しかし、いまでは新たな採掘は禁止されており、国内市場でも良質な原石を見ることは少なくなりました。

そんなピリカの地へ、まるで呼ばれるかのように降り立ったのは2020年秋のこと。
出会ったのは、はにかむ笑顔が素敵な仲の良いご夫婦でした。

90歳を超えたお2人は「そろそろ終活をしたいの」と口癖のように繰り返しながらも、まだまだお元気そうに葡萄や野菜、色とりどりの花々を育て、たくさんの猫たちと暮らしています。

ご自宅のすぐ横を流れる川は、陽に照らされると幽玄の地におりたかのような美しさ。昔から砂金も採れるという水には山女が泳ぎ、川底まで碧くキラキラと輝いていました。
そして、目が慣れると所々にみえる玉髄の原石たち。

実はこの夢のような地に住まわれるご夫婦こそが、長きにわたり石の加工業に携わり、街にのこる良質な原石を方々よりもらい受け、大量に保存し守っていたご本人。

「ここ以外には、もう本当にないのよ。誰か大事にしてくれる人に受け継いでほしい」
そんな話を受け、いったんは東京へ戻ったものの、すべてをHariquaで受け継ぐという話がまとまるのに時間はかかりませんでした。

Pirka Chalcedony ピリカ玉髄(カルセドニー)

玉髄(カルセドニー)は、クォーツと同じ石英グループに属しますが、そのなかでも潜晶質と言われるミクロの結晶が集まった構造をもつ石のことを指します。

色は優しい透きとおるような乳白色、青みを含んだ淡いブル―グレー。
また鉄分が入り込むことで、紅葉をみるような黄、朱色を含むオレンジカラーへも変化します。

半透明の原石を水と光に透かせば、それはもう雲の隙間から差し込む朝日をみるような神々しさを放ちます。
初めて見たときには、国内で未だこれだけ美しい玉髄がまだ残っていたのかと感動したものです。

更に、ジュエリーへ加工するために切り出した部分は、色や透明度、縞の有無を第3者機関で改めて鑑別を行いました。
明記された宝石名は、いずれも玉髄(カルセドニー)。鉱物名は石英(クォーツ)。
強い縞が入ると瑪瑙(アゲート)と書かれることもありますが、今回ご紹介する淡い濃淡やグラデーション縞はカルセドニーとなりました。

そのため私たちは、今回譲り受けた原石やそこから研磨する石たちを、土地の名と”美しい・豊かな”の意を表す「ピリカ」に因んで「ピリカ玉髄」と名付けたのです。